迷いと涙と学びの勤労感謝の日。
商売の真髄を教えてもらった日──ロスのパンと涙の帰り道
勤労感謝の日。
久々の店舗営業は、いつもとは少し違うスタイルで始まった。
玄関先にテーブルを出してミニマルシェ風に。
外にはのぼりを立て、
「ちょっと寄ってって〜」と声が聞こえてきそうな雰囲気にしてみた。
オープン直後から常連さんが来てくださり、胸がじんわり温かくなる。
支えてくださる方々の顔を見ると、
“あぁ、続けてきてよかった…”
そんな想いがふわっとこみ上げた。
そして今日は、話題の 初挑戦バインミー もお披露目。
その後は…お察しの通り“ぱったり”。
これもパン屋の現実であり・・・。
■営業後の静かな時間と、迷いに迷ったLINE
営業を終え、在庫を抱えて玄関を閉めた時、
胸に引っかかったのは
“この子たち(パン)、どうしようかな…”
という小さな不安。
売りたい、というより、
誰かの元で美味しく食べてもらいたいという気持ち。
そんな気持ちがぐるぐる回った。
家まで車を走らせながら、
LINEを開いては閉じ、また開いて、
送信ボタンを押すまで
どれほど迷ったやろう。
「迷惑ちゃうかな…」
「お願いしてええんかな…」
そんな気持ちが渦を巻く。
でも思い切って
ポチッ。
その直後、秒で返ってきたメッセージがこれ。
「来て!来て!!
うれし〜!!!
持ってこーーーーい!!!」
自宅の駐車場で、スマホを握った手が震えた。
■全部買ってくださり。
店先に着くと、
あの方は迷いもなく、当然のように
全部買ってくださった。
私は当然、ロスなので半額にしようと思った。
それが礼儀であり、感謝の形だと思ってきたから。
でも返ってきた言葉はこうやった。
「あかん!そんなことするならLINEから消す!」
怒っているんやなくて、
“あなたの価値を下げるようなことは、私は許さへん”
という愛情そのもの。
気を遣わせないように、
ユーモアで包んで、
でも芯はまっすぐ。
“優しい”…
という言葉じゃ足りんくらい、
“人としての品格” を感じた。
■商売の真髄を教えていただいた
その瞬間、胸の奥でコトン…と音がした。
感謝は、値段を下げることではない。
感謝は、対等な対価を受け取ることでも成り立つ。
パンの値段には、材料費だけやなく
・仕込む時間
・寝かせる時間
・焼成の技術
・試作の失敗
・お客様を思う気持ち
・自分の人生全部
それがぜんぶ含まれている。
手間賃を受け取るのは当然。
そして“当然の対価”を受け取る覚悟もプロの仕事。
今日のあの方は、
その真髄を言葉じゃなく、
“支払い方”で教えてくれた。
■帰り道、涙が止まらなかった
商品を手渡し、
「ほんまにありがとう」と挨拶して
帰り道、涙がぼたぼた落ちてきた。
悲しいわけでも、悔しいわけでもない。
ただ、
自分の仕事をまっすぐ肯定してもらえたこと
それが胸の奥に深く響いて、
心が緩んでしまったんやと思う。
「商売って、こういうことなんやなぁ」
「私、もっとちゃんと学ばなあかん」
そんな気持ちが静かに湧き上がってきた。
■最後に
パンを売るだけの日ではなかった。
商売の本質、対価を受け取る意味、
手間賃の大切さ、心意気の在り方。
全部がひとつにつながった日。
勤労感謝の日の終わりに、
こんな深い学びをもらえるなんて
思ってもみんかった。
あやさんのパン屋は、
明日またひとつ成長するんやと思う。